『カルテの入手について』

 カルテ等(診療録・看護記録・検査記録・X線写真等)のコピーを入手することは近年、容易になりつつあります。地方自治体が設立した病院(県立や市立や町立など)の場合、その自治体が個人情報保護条例を制定しておれば、役場の条例窓口でカルテを請求できます。また、個人情報保護条例を持たない自治体でも、情報公開条例(公文書公開条例)を持つ場合は、その条例によって個人情報の本人開示がされるべきであると、96年9月27日、大阪高裁は判決を下しています。(きちんとした個人情報保護条例を制定している自治体はまだ少ないですが、情報公開条例は全都道府県をはじめ多くの自治体が既に制定しています。)また、厚生省が設置した「診療情報の活用に関する検討会」も98年6月18日にカルテ開示の法制化を提言しました。国立大学の付属病院や、日本医師会もカルテ開示のガイドラインを制定していますし、一般の私立病院や開業医でも、カルテ開示を実践する病院は増えています。
 しかし、裁判の可能性がある場合は、少しでもカルテ改竄などを防ぐ必要があります。そのためには裁判所を通じた証拠保全がやはり最善だと思います。裁判所への保全申し立ては一般に弁護士を通じて行いますが、書式をきっちり揃えれば自分ですることも可能です。また、弁護士に依頼する場合でも、証拠保全の当日にはできれば原告本人も立ち会うことでより厳正に行われるのではないかと思います。
私の場合、妻が陣痛促進剤事故にあった直後に被害者団体に電話をすると「医療裁判ではカルテ改竄は当たり前のように行われいます。少しでもカルテを改竄されないために、証拠保全が済むまでおとなしくしていなさい」とアドバイスを受けました。そして、すぐに弁護士に相談し証拠保全の手続きに入ってもらいました。それでもカルテには私たちの記憶と違う部分がいくつもありましたが、一応裁判に勝てるだけの証拠を押さえることができたわけです。たしかに、どれだけおとなしくしていても事故直後にカルテを改竄されることもありえますし、証拠保全の際にも、裁判所は直前には病院に連絡を入れますから、そこから急いで改竄や証拠隠滅を行うことも可能ではあります。しかし、そもそも証拠保全はそれらの改竄や隠滅を防ぐためのものですから、他のどんな方法よりも、裁判のためのカルテ入手の最善法であるはずです。