2003年7月14日

「診療情報の提供等に関するガイドライン(案)」に関する意見

医療情報の公開・開示を求める市民の会 
事務局長 勝村久司
tel:090-8529-7016 fax:0774-72-9619
                      http://homepage1.nifty.com/hkr/simin
czt02077@nifty.com

1:第1項について
 「位置づけ」において、現在既に、日本医師会や国立病院、国立大学病院をはじめ、それぞれの医療機関において様々な同種のガイドラインが定められている状況下で新たなガイドラインを制定するのであるから、それらとの関係についての整理が必要である。具体的には、「医療機関ごとに基準が異なり、国民にとってわかりにくい現状を改めるためにガイドラインを1本化する」という位置付けを明確にする同時に、そのことによって「患者への診療情報の提供がより進展すること」を目的として記載すべきである。
 
2:第3項について
 一般原則において「診療情報の提供は、・・・具体的な状況に即した適切な方法により行われなければならない」とされているが、「具体的な状況に即した」の前に「患者のニーズを尊重しながら」という主旨を付記し、医療者側が一方的に提供方法を判断してしまうことを避ける配慮が必要である。

3:第5項について
 本来、診療記録はできるだけ長期間正確性を確保した上で保管されるべきであることは明らかである。実際、多くの医療機関が、法律で定められた保存義務期間以上に、長期保存をしている。したがって、医療機関の実情に合わせ、「診療記録をできるだけ長期間保管するよう努めなければならない」として、情報の正確性を担保するために、必要がないのに故意に廃棄することや軽率な廃棄を慎む配慮が必要である。

4:第7項(2)について
 開示を求め得る者については、既に、レセプト開示請求において「患者の委任を受けた弁護士」が認められ7年以上が経過していることから、同様に加えるべきである。

5:第7項(4)について
 診療記録の開示に要する費用については、診療情報の提供をすすめるために、「コピー代など実費の範囲において」という但し書きを付記して、患者にとって費用の支払いが開示請求の妨げにならないような配慮が必要である。

6:第8項について
 「診療情報の提供を拒み得る場合」のについて、まず、「・・・診療情報の全部又は一部を提供しないことができる。」という記載は文中の「全部又は」を削除して、「・・・診療情報の一部を提供しないことができる。」とするべきであり、事由の(1)(2)の内、(2)は全文削除すべきである。また、「・・・申し立ての全部又は一部を拒む場合には、・・・」についても、「・・・申し立ての一部を拒む場合には、・・・」と書き改めるべきである。
 その理由は明快で、そもそも必要があって診療情報の提供を求めているのに「患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがある」という理由で提供を拒まれた患者は、そのことによって心身の状況を著しく損なうことが必然であるからである。実際、大阪府にある枚方市民病院では2003年4月1日より、第三者の利益を害するおそれがある情報を部分的に非開示にする以外は全て例外なく診療情報の提供を行うガイドラインを定め実施して数ヶ月が経っているが、そのことによって診療情報の提供に関するトラブルや問題もこの間、何も起こっていない。

7:第11項について
 日本医師会のガイドラインならば日本医師会の苦情処理機関、都道府県が定めたガイドラインであるならば、都道府県が設置する機関に苦情を申し出ることに関しては一定の理解をすることができるが、今回は、それらを超えて、国として医療者側や患者側など国民全ての議論を経た上で定めたガイドラインであるのだから、本来は、国が責任を持って、苦情を受け付け、処理すべきである。少なくとも、苦情の受付は国の機関が行うべきである。

8:第12項について
 患者への周知徹底においては、各医療機関の規程だけにとどまらず、その基本となるガイドラインの院内掲示や院内配布をも推し進めるべきである。
 また、ガイドラインの目的に則し、ガイドラインの存在が広く一般国民、全医療関係者に知らしめられ、普及するための努力に国が自ら中心的に関わるべきである。

以 上 


「市民の会」メインページに戻る