2000年1月17日

高 度 情 報 通 信 社 会 推 進 本 部
 個 人 情 報 保 護 検 討 部 会
 座 長  堀  部  政  男  様

知る権利ネットワーク関西
事務局長 岡本隆吉
医療情報の公開・開示を求める市民の会
事務局長 勝村久司
教育情報の開示を求める市民の会
代表世話人 山口明子

意 見 書

 個人情報保護制度整備のためにご尽力いただいておりますことに敬意を表します。
 私たちは個人情報保護のあり方に関心を持っている市民団体ですが、昨年11月に貴部会が発表された「わが国における個人情報保護システムのあり方について」の中間報告に対する意見を、取り敢えず以下の通り申し述べます。

T:個人情報保護基本法は、まず行政の保有する個人情報について制定されるべきです。行政機関と民間部門の双方に適用される基本法を制定するのは、一方では望ましく思われますが、以下のような危惧があるところから、まず、行政機関の保有する個人情報を対象とする基本法を制定するべきではないかと考えます。

1.中間報告は、個人情報利用の有用性にしばしば言及しているばかりでなく、「民間事業者の事業活動などに不安を与えないよう(6頁)」の類の文言があるところからも、民間事業への過度とも思える配慮があります。これでは真に個人情報保護を目的とする法制度が整備されうるかどうかについて疑問を感じざるをえません。双方を満足させるような法制度を整備しようとすれば、徒に整備が遅延し、また内容的にも多様な解釈が可能な曖昧なものにならざるをえないのではないかと危惧します。

2.個人情報を最も多く保有しているのは行政機関です。現在、民間部門の保有している個人情報の悪用や流出が話題になり、そのことに関心が集まってはいますが、実際には行政機関の方がはるかに多くの個人情報を有し、しかもその実態は不明確です。したがって、まず、行政機関の保有する個人情報についての保護制度が整備されるべきです。

3.情報公開法が、まず行政機関の保有する情報について制定されたように、個人情報についても行政機関の保有するものについて基本法を制定し、次いで個々の部門の特殊性に合わせて個別法を制定する方が、基本法との距離も明確になり、議論もしやすいのではないかと思います。

U:基本法は、少なくとも現行の個人情報保護法の不備を補い、あるいは欠陥を改めるべきです。以下に中間報告の該当個所と関連づけて述べます。

1.「U 個人情報保護システムの基本的考え方 1 個人情報保護の目的」について
 現行の個人情報保護法は、行政の適正かつ円滑な運営を図る」ことを「個人の権利利益を保護する」ことに先行させていますが、これは、個人情報保護法の目的としてふさわしくありません。「個人情報保護法」と銘打つからには、憲法13条に規定する基本的人権の一部であるプライバシーの権利を保護するものであることを明確にすべきです。
 中間報告では、この点に関して明確な姿勢が示されていません。

2.「同じくU 2 保護すべき個人情報の範囲 イ 保護すべき範囲」について
 電算機に係る情報のみならず、マニュアル情報をも保護の対象とすべきことは当然です。

3.中間報告には言及がありませんが、個人情報について、収集すべきでない情報を定めるべきです。具体的には、「思想・信条・宗教に関する情報」「病歴」「政治・労働・市民活動など、憲法上の権利の行使に関する情報」「社会的差別につながる情報」などの収集を禁止すべきです。

4.「同じくU 3 個人情報保護のために確立すべき原則(個人情報保有者の責務)(1)〜(3)」について
 個人情報は目的を明示して本人から直接収集することを明確にすべきです。
 また、目的外使用や外部への提供は原則として禁止し、必要な場合は本人の同意を求め、緊急を要する場合も必ず事後通知をすべきです。
 個人情報を他の個人情報を結合することは原則として禁止すべきです。
 個人情報ファイルの作成・開示、個人情報ファイル簿への掲載に例外規定を設けるべきではありません。
 ファイル・ファイル簿に掲載されなければ、個人は自己の情報の存在すら知ることができません。ファイルの公開と個人情報の開示とは別問題であり、開示非開示は個別の案件について審査・決定することです。

5.「同じくU 3 (4)〜(5)」について
 自己情報の開示・削除・訂正請求については、明確に法律上の請求権として認定し、請求拒否に対しては行政不服審査法の規定にしたがって不服申し立てが認められるべきで、単なる苦情処理として対応されるべきではありません。
 さらに、このことからして当然のことですが、独立の第三者的審査機関を設けるべきです。
 また、自己情報の開示については原則として適用除外を設けるべきではありません。
 特に教育・医療情報についての現行個人情報保護法の規定は、現在の地方自治体の個人情報保護条例の運用実態からも甚だしく乖離しています。

6.「V 個人情報保護システムの在り方 7 悪質な不適正処理などを行った者に対する制裁措置の検討」について
 現実に多くの個人情報が本人に知らされることなく流通し利用されています。これを防ぐ方策が個人にはほとんど存在せず、しかも一旦被害を受けるとその回復はほとんど不可能である以上、個人情報処理の原則に反した者に対しては、厳罰を以て臨むべきです。

 取り急ぎ、以上の意見を申し述べます。貴部会の審議に沿って引き続き意見を具申したいと考えますので、今後もその機会を設定してくださるようお願いします。

以 上