2000年1月20日

高 度 情 報 通 信 社 会 推 進 本 部
 個 人 情 報 保 護 検 討 部 会
 座 長  堀 部 政 男  様

医療情報の公開・開示を求める市民の会
事務局長  勝 村 久 司

「個人情報の本人開示」を求める意見書

 個人情報保護制度整備のためにご尽力いただいておりますことに、敬意を表します。
私たちは、先の国の情報公開法制定に際にその答申をまとめた総務庁行政改革委員会の情報公開部会が開いた公聴会で、「個人情報の本人開示」の権利を法律に規定するよう求めた市民団体です。情報公開法制定に際しての最終答申に付随した「考え方」の中では、私たちの意見を踏まえ、医療や教育分野における本人開示の重要性が書かれ、将来的には、個人情報の保護を目的とする法律の中で規定して行くべき問題とされています。したがって、個人情報の本人開示について、個人情報保護に関する法律を制定するにあたり、改めて意見を述べさせていただきます。

 地方自治体の中では、個人情報の自己コントロール権を認めた個人情報保護条例を制定しているところがいくつかあります。まず、それらの先進的な自治体での経験を元に議論をしていただきたいと思っています。それはちょうど、地方自治体の情報公開(公文書公開)条例が先行して、国の情報公開法が続いたのと同様です。せっかく、パイロット実験的な実例があるのに、それを活かさず、憶測で議論はして欲しくないということです。以下は、実際に地方自治体の個人情報保護条例に基づいて個人情報が開示されてきた実例に基づく意見です。

(1)多くの自治体がしているように、医療・教育に関する個人情報を、本人からの請求があれば全面開示するよう規定していただきたい。医療・教育の個人情報に関しては、「非開示にすることの方が当該個人の利益になる場合がある」とするような意見もあるが、それは、間違いである。原則として請求があれば開示されている中で、例外的非開示を実行した場合、その当該本人には不安や不信ばかりが残るのは当然であり、本人の利益には決してなりえない。開示請求があれば、個々にどのように開示する際に説明等を加えていく方法が検討されることは許容するが、開示するか否かを検討することは、本人の利益にはならないことを確認していただきたい。しないかではなく

(2)多くの自治体がしているように、遺族からの開示請求を認めていただきたい。兵庫県が個人情報保護審査会が遺族へもカルテを開示するよう答申した内容をぜひ検討していただき、同様の考え方を示していただきたい。また、大阪市では、法定代理人である親が、子どもが死ぬや否や開示請求できなくなる、と一度は見解を発表したが、大きな非難を浴び、その後は開示する方向に転換している。東京都も、少なくとももともと法定代理人であった遺族に対しては開示することになっている。現実に、遺族からの個人情報の開示請求は多い。この問題を避けて通るというような無責任な対応にならないようお願いしたい。

(3)以上のように、一部の自己コントロール権を尊重する個人情報保護条例を持つ自治体では、その自治体が保管する公立の医療や教育に関する個人情報は既に開示され、何の問題も生じず、逆に市民の納得と信頼を得ている。同様に、まずは国立の医療や教育に関する個人情報が開示されるよう、個人情報保護法で規定していただきたい。医療・教育に関しては、民間に関しても個別法の制定等を含め検討していただきたいが、その前に、自治体と同様に国立病院や国立学校の個人情報の開示請求権を認めていただきたい。

以 上