<レセプト開示実現5周年記念シンポジウム(東京)>
『医療改革はレセプト開示・カルテ開示から』
日時 2002年6月29日(土)13時〜16時
場所 アルカディア市ヶ谷(私学会館)6階
近藤誠さん(慶応大学医学部放射線科講師)
の講演レジュメ
医療における不正について
(当日は、ご講演頂くにあたって、医療界におけるあらゆる「不正」について、まとめて頂くことができれば、とあらかじめおねがいしておりました。)
医療における不正について
・不正請求
・不要な検査や治療
・未熟な医者が治療
・カルテの改竄
・裁判での偽証
・医学研究における不正
それらの原因や背景は共通したところが多い
短時間で、すべてを説明しきれないが、できるかぎりお伝えしましょう
★不正請求
・していない検査や治療を、したことにして請求する
論外だが、じつに多い
☆原因
・診療報酬制度:出来高払い
検査や治療をしただけ請求できる
・レセプトのチェック体制がない
検査・治療内容にみあった傷病名をつけておけばフリーパス
誰も見ていなければ、悪さをしたくなる
・医者のモラルが低い
専門家としての誇りがない
★不要な検査・治療
実際に行われた検査や治療にも問題が多い
☆不要な検査
なにかにつけて採血、レントゲン撮影、内視鏡
月一回レントゲンをとる整形外科
放射線被ばくは心配ないと、待合室にウソの張り紙までしている
職場健診や人間ドックは不要な医療の最たるもの
これほど行われてきたが、うければ寿命が延びるというデータはない
☆不要な手術
富士見産婦人科病院事件が代表的
病名をいつわり本来不要な手術をした
被害者である小西さんのお話を聞きましょう
本当に子宮筋腫があっても、手術は原則不要
無症状でも大きいのがあると、日本の医者は手術を勧める
イギリスの婦人科医は、「どうして手術したいの?」「やめておきなさい」と
☆不要な薬
5種類も10種類も処方する
欧米にはみられぬ蛮行
副作用被害が生じている
子どものインフルエンザ脳症
薬害
解熱剤が原因の第一
複数の薬が処方された場合、なかに脳症を起こすものが含まれている
☆原因・背景
・収入を増やしたい
開業医は自分の収入が増える
これだけ稼いだら十分、という気持ちにならない
勤務医は、もっと稼げと尻をたたかれる
・データ的根拠を大事にしない
くじ引き試験をして有効性を確かめてから導入するのが本筋
肺がん、乳がんなどのがん検診
成人病健診
職場健診を法で強制
フィンランドで行われたくじ引き試験では、かえって寿命を縮めた
・薬を出せば出すほど儲かる構造があった
薬価差益
・勉強不足で製薬会社のパンフレットを鵜呑みにする
・この症状にはこれ、と症状ごとに薬をだすので、薬の数が増える
★インフォームド・コンセントをきちんとやらない
・違法
手術ではない方法があるのに、手術しか説明しないで手術する
犯罪
★未熟な医者、いい加減な医者、金儲け主義の医者が治療に当っている
・医療事故の多くは、医者の腕が未熟だから生じる
・医学教育、専門家の養成がなっていない
・医学生の選抜からして問題
金があれば医学生になれる
帝京大のヤミ寄付金事件
帝京大だけとは思えない
☆原因、背景
・医療の質を問題にしてこなかった
・戦時中に臨時医学専門学校をつくって、中途半端な軍医を多数養成
戦後、医者になった
一時期、医者余り
・昭和36年に国民皆保険制度
国民のがわからみるとフリーアクセス
開業医のがわからみると、収入増
・武見太郎に率いられた日本医師会の力が強くなった
保険点数だけに関心
医療の質には無関心
・開業医は、研鑚する努力もせず、金、金、金、でモラルが下がった
・きちんとした専門医制度をつくらなかった
現在、各学会が専門医を認定する制度をもっている
ほぼ全員、専門医になれる
とても専門医とは呼べない
・学会の中枢にいる権威たちが、自分たちが専門医になれるよう制度をつくる
☆大学の医局制度
医局は、大学内の村
教授がすべての権限を握っている
関連病院の出張人事も
医者は教授の顔色をうかがう
患者のためではなく、大学のためでもなく、医局のために診療を行う
★まずいことが生じると、カルテを改竄する
自己保身のため
病院や医局を守るため
改竄したときのペナルティがなかった
医療裁判でカルテの改竄が証明されても、被告病院が勝訴する
昨日、東京女子医大で医師2名が逮捕された
一人は改竄したため逮捕された
今後、少し正常化するだろう
★裁判になると、偽証する
山梨の産婦人科医が偽証教唆罪で有罪
懲役1年6か月
偽証をしたナースも有罪
懲役1年
★鑑定人が被告病院の肩をもつ
以前、自分が論文に書いたことと正反対のことを鑑定書に書く
★医学研究において、データを捏造する
★臨床試験の論文で、効果を強調し、副作用を軽くみせかける
★製薬企業と癒着して、薬が売れるように宣伝に一役かう
学会で
医学雑誌で
マスコミで
解決策
☆一にも、二にも情報公開
明るいところで悪さはできない
・カルテ開示、レセプト開示を進める
・患者が、自分がうけた治療を検証できるようにする
・していない検査・治療の不正請求はレセプト開示で減る
この点では、カルテ開示よりレセプト開示のほうがインパクトが強い
だから医師会は開示したがらない
勝村さんたちの一層の努力が望まれる
・意味ない検査・治療を減らすには、各病院、診療所の診療内容を公開する
・医療事故の履歴を公開
・どこの卒業か、どこでトレーニングをうけたかを表示させる
・論文に製薬会社との関係を記載させる
☆患者個人にできること
・医療情報を集める
・セカンド・オピニオンを得る
・医療費を支払ったら、明細書を要求する
☆制度的な改革
・医学部の数を減らす
・医師免許更新制度
・医師処分の厳格化
医道審議会は有名無実
破廉恥犯しか医師免許を取り消していない
医療事故でも免許を取り消すようにする