第8回「薬害根絶フォーラム」(2006年11月18日)において
時間の関係等で紹介できなかった質問への回答

回答は全て各回答者個人の見解をそのまま掲載したものです。
薬被連が団体としてまとめた回答ではありません。


薬害救済基金法が作られているが、厚労省の対応は、冷たいと思う。ミドリ十字は、その悪例だと思うが、その他の対応は?

◎回答者 栗原(MMR被害児を救援する会)

 1979年薬事二法の一つ医薬品基金法により、翌年より医薬品副作用被害救済制度がスタートし四半世紀が経過しました。最近までその制度の広報が十分なされないまま経過し、被害者や日弁連などが批判してきました。2002年に独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案が上程され、救済業務に加え審査・安全対策までも機構に委ねることに強い懸念を表明した私たち薬被連は、救済制度に関して「生物由来製品感染等救済制度を創設する。その他はこれまでどおり」という厚労省に対し、従来から山積している副作用被害救済制度の課題解決を迫りました。いっぽう、それまでに行政監察・行政評価のなかで改善への勧告も出されていたことも事実でした。
 薬被連は2003年12月、厚生労働大臣宛「医薬品副作用被害救済制度に関する要望書」を提出し、交渉を重ね一定の成果を得てきました。
 1、 2005年10月より、判定の迅速化を目指し、総合機構に設置された調査課、及び厚労省の判定部会を二部会制に移行したこと。
 2、 2003年度より制度広報の予算措置を講じたこと。2006年度広報の重点を医療機関として、日本医師会、日本薬剤師会と連名して、医師・薬剤師向けパンフレットが作成されまもなく配布される予定。
 3、 2004年度分から救済の決定事例を総合機構のWeb上に公開していること。
 4、 申請者に代わって医療機関への資料の請求をおこなうことも可能とした。
 5、 法に規定されている受給者にかかわる保健福祉事業が放置されてきたことについて、2004年度から被害者代表もはいって実態調査の企画にかかり、2005年度末に不充分ながも報告書を公表し、事業の具体化に着手してきたこと。などの改善が図られてきたことは評価できます。
 しかし、フォーラム当日の映像にもありましたが、「胎児の死亡に関して現在の法体系の下ではその救済はできない」「介護者の損失や負担への給付もできない」など厚労省の対応にはご指摘の通り冷たいものがあります。
 もっとも基本的なところの、判定においてはどうなのか、法の理念は副作用被害、感染被害を受けた場合「幅広く救済する」というところにあると理解しますが、はたしてそのようにおこなわれているのか疑問も生じています。当然ながら判定部会は非公開であり、公開された議事録はほとんどマスキングされていますから判定状況を確認することもできません。
 最近の事例として、国の備蓄対象とされたインフルエンザ治療薬タミフル服用後に異常言動にともなう事故死の例が救済されないという事実があります。2004年6月に注意喚起され添付文書の改訂が為されていたにもかかわらず。幅広い救済、判定の公正さをどのように担保できるのかが課題です。

●今、混合診療が騒がれています。薬被連の役員は、どう考えていますか?

◎回答者 中西(京都スモン基金)

 先ず、初めに「混合診療とは何か」についてふれ、次に我が国に於ける「混合診療」導入の経緯とその動向について述べ、本題に入りたいと思います。
 「混合診療」とは、一連の医療行為で、保険給付の対象となる「医療行為=保険診療」と、それ以外の「医療行為=保険外診療=自由診療」を併用することを言います。わが国では、1961年、健康保険証1枚で、全ての国民が等しく医療を受けることができる、世界に類のない、素晴らしい『国民皆保険制度』が誕生しました。この『保険制度』では、「混合診療」を固く禁止していました。禁止の理由として @支払い能力の格差が、医療内容の格差をもたらす。A安全性が確立されていない、医療行為が横行する。B不当な患者負担を増大させる。C全国民に必要十分な医療を提供する『国民皆保険制度』を危なくする。D医療資源の配分効率を低下させる。
 しかし、一方で「混合診療」導入も容認すべきとの主張も行われてきました。1984年の健康保険制度改正で、高度先進医療及び選定療養について差額徴集を認める「特定療養費制度」が設けられ部分的に「混合診療」を導入することになりました。しかし、厚生労働大臣の承認を受けた特定承認保健医療機関が申請し、厚生労働大臣が承認した高度先進医療に該当する基礎的部分に限定するなど厳しく制限してきました。その背景には、厚生労働省は、高度先進医療の拡大と迅速化を図るとともに、その保険適用を進めることにより対応しようと言う考え方を持っていたからです。
 現行の「特定療養費制度」では、、部分的に「混合診療」が導入されていて「高度先進医療」と「選定医療」の二つの分野からなっています。「高度先進医療」を行う場合では、一般の保健医療に該当する基礎的部分(診察、検査、入院等)は、特定療養費として保健から給付され、、先端医療部分は「保険外診療」として患者が差額負担することになっています。また、「選定医療」は、医療の本質とは関係なく、患者の選択に委ねてよいサービスのうち、厚生労働大臣が承認したもの(差額ベッド・歯科材料・予約診療・新薬等の治研など=従来は15項目)について、基礎的部分を特定療養費として保険から給付し、残りの部分を差額負担するようになっています。
 ところが、財源問題を中心に、いつしか『「保険適用」の拡大と迅速化』という考えは消え、小泉内閣の「医療制度構造改革」の一環として、「中央社会保険医療協議会」で、制限回数を超えて受けた診療の「選定医療」への追加について「28項目について保険診療との併用を可能とする案」の諮問がなされ、協議会の下部組織の「基本問題小委員会」で(「検査」=腫瘍マーカー・「リハビリテーション」・「精神科専門医療」など)7項目が加えられ、平成17年10月からは、従前の15項目に7項目が加わり、22項目が実施されている。
 政府与党が発表した「医療制度改革大綱」では、試案では触れていた「混合診療」について、一応見送られたが、「構造改革路線」を引き継ぐ安倍政権によって、早晩導入が行われる危険性があり、厳しく、見守って、阻止しなければなりません。
 薬害被害者は、被害そのものが、「薬害」に起因する「障害」であったり、常時医療を必要とする「病様・病体」の継続した状況におかれ、生き続けていかなければなりません。「薬害」解決の段階で、運動の成果として勝ち取られてきた「医療費給付」は、スモンの例で言えば、「保険適用医療」=「保険診療」について10/10国が負担することになっています。即ち、この事例から考えても「混合診療」の導入は看過することはできません。
 他のサービスと違って、「医療サービス」は、種類や内容が複雑で、どの部分迄が「保険適用」であるか「保険適用外」であるかが患者側にはわかりにくいという問題があることも留意しなければなりません。こうした薬害被害者としての医療と切り離すことができない状況をいつも考慮しながら、「混合診療」問題を考えていきたいものです。
 いま、「混合診療」問題は、医療サービスそのものを「保険導入検討医療」と「患者選択同意医療」に分けようと言う方向が出されています。この考えは、憲法25条「生存権」に関わる社会保障、即ち国民にとって大切な教育・福祉・医療の分野で、「二階建て」 構造改革が行われ、進行していることを見過ごしてはなりません。その背後には、「自己選択」といぅ甘い言葉で眼を逸らそうとしていることも見過ごしてはなりません。教育の分野即ち、学校では「基礎・基本」を学習、それ以外は「自己選択」で学習塾など自己責任・自己負担で、という流れが定着しつつあります。
 また、福祉分野では、国民を「要介護認定区分」「障害認定区分」などの手法で、「区分」毎にサービスを低く限定し、それ以上のサービスは「自己選択・自己負担」ですすめられ、いくつもの矛盾や問題が噴出しています。医療分野でも、患者を三つに分ける「医療区分」が導入され、「医療区分1」の患者は、「入院ができない」などそれいじょうの区分は、「自己選択・自己負担」という制度が進行しています。「一階」部分=公費負担は、できるだけ縮小して、「二階」部分=自己負担を拡大するという施策です。この構造改革を阻止することを真剣に考える必要があります。
 こうした、一連の流れの中で「混合診療」問題を考える必要があります。「保険適用」の拡大、迅速化こそが、多くの国民の願いであり、私たちの願いです。

学校教育の中で、被害者の講演は、なかなかできないと思うが、学校の先生対象にお話しする機会がありますか?

◎回答者 勝村(陣痛促進剤による被害を考える会)

 長年の薬被連の文部科学省との交渉の一つの成果として、近年、医学部・薬学部・看護学部などの大学で被害者の講演が少しずつ行われるようになってきています。まだまだ数は少ないですが、講演依頼が各大学から薬被連宛に届くたびに、現在は「いしずえ」を中心に責任を持って内部で人選等の調整をし対応しています。その結果、学生からは大変を好評を得て、一度実施した大学には、翌年以降も講演依頼が続くようになっています。
 小・中・高の学校からは、薬被連宛に正式に講演依頼が届くのはまれですが、被害者の中には、それらの学校でも講演をした経験がある者もいます。
 ただ、ご質問にあるような、学校の教員や大学の教員を対象に被害者が話しをすることは、これまでほとんどなかったと思います。教員を対象にした講演もまた、とても意義があり大切なことだと思いますので、そのような機会を頂くことができればうれしく思いますし、私たち自身もそのような機会が得られるよう努力していかなければいけなければと思います。

大阪HIV訴訟では、和解のあとミドリ十字の社長他数名と厚労省を告訴して刑事事件として争ったと記憶しています。被害者は、厚労省も訴えていますが、製薬企業を告訴できれば良いと思いますが、国も訴えられているためその陰に隠れています。どのように考えたらよいですか?

◎回答者 花井(大阪HIV薬害訴訟原告団)

(もうしばらくお待ち下さい)

一見普通の人と変わらなく見えていて苦労しています。偏見もあり、3年すぎてやっとここまできましたが、特にこれという病名がつかない被害者の会がありますか?

◎回答者 矢倉(京都スモン基金)

 多分、心身に障害があるか、内部障害のある方の質問だと思いますが、一見普通の人と変わらなく見える障害者は、たくさんおられます。薬被連に加盟している方の中にも、この人は、どんな障害があるのだろうかと思ったこともあります。お話しを聞いてみて、初めてそんな障害を持っておられたのかとわかる場合があります。ただ、これという病名がつかない被害者の会というところが気になります。そこで、事務所に、「自分は、薬害だと思うのですが」といった相談がいくつかありましたので、それらの例から、少し挙げてみたいとおもいます。1年に、3から4件ありました。今年は、2件です。一番相談の多かったのは、ステロイドによる副作用です。□アトピーによる皮膚の炎症、長期使用による症状の悪化、それによって神経症、うつ症状が出て、神経内科、精神科の治療を受ける場合が多い。しかし、治らないばかりか、結局病院をたらいまわしにされて、いっそう、うつ症状が強くなって困っている。□人工股関節を入れた。ステロイドの副作用で困っている。風邪を引きやすくなり、うつ症状でも悩んでいる。性出血もある。□ステロイドの外用剤を使ったのに薬品名を医師が教えてくれない。□10年前に心臓の手術を受けた。薬の服用で、筋肉が、溶ける。原因は、わからない。□白内障の検査薬で眼に異常が出て困っている。医師は、点眼薬をくれるだけ。□眼底検査で検査薬を使用した。1,2年たっても、白が、七色に見えたり、紫に見えたりする。医師に相談しても、取り合ってくれない。心身症ではないのかといわれた。□横浜の入院患者から:助けて欲しい。監禁状態で危険な薬を投薬されている。やっと、抜け出してрした。→病院名、自宅の連絡方法を聞き、自宅に連絡する。父親が出て、「何があってもほっといてほしい。家族を困らせないでくれ」私としては、悩みながら、どうすることもできなかった例。
 これらの方たちは、誰にも相談することができなくて、医師からも見放されて、すがるところがなくて事務局に相談してこられた人たちばかりです。こういう方たちは、氷山の一角で、多くの方たちが病名も、原因もわからなくて苦しんでいるのではないでしょうか。したがって、被害者の会を作ったりすることは、できないでしょう。病名のつかない被害者の会を私は知りません。もし、この記事をごらんになって教えてくださる方があれば幸いですが。
 薬被連事務局は、医師も薬剤師もいないこと、薬害であるかどうかの判断は、できないので、やはり、専門家に再度、診察を受けるように勧めています。時には、浜先生や某病院の神経内科の先生を紹介しました。また、医薬品総合機構の救済基金や、薬相談を紹介しています。答えになったかどうかわかりませんが。