声 明 文
2000年10月14日
われわれ薬害被害者は、より健康な生活を営むために使用したはずの医薬品等によって、ある日突然健康を奪われる被害に遭った。そして、筆舌に尽くしがたい苦難のなかで日々の生活を営みつつ、被害の救済と薬害根絶を求めて闘ってきた。それにもかかわらず薬害発生は繰り返され、被害者救済の施策は未だ十分とは言えず、とくに薬害ヤコブ病被害およびMMR被害については、国はその責任を認めず現在も訴訟で争っている。
このような現状に対して、昨年10月、われわれは薬害被害者団体相互の連携を強めるべく「全国薬害被害者団体連絡協議会」(薬被連)を結成した。薬被連は、発足当日の厚生省、文部省への要望書提出と交渉にはじまり、薬害根絶フォーラムの開催、書籍の出版、8.24薬害根絶デー行動への参加など、この1年間精力的な活動を続けてきた。
これらの活動のなかで、薬被連に新たな団体が加わり、また多くの心ある市民・医療関係者と問題認識を共有することができるなど一定の成果が見られた。しかし、薬害発生の構造は大枠では未だ変わっていない。それに加えて、薬剤の不適切な選択・使用による健康被害は相変わらず後を絶たず、最近の医療現場での人為ミスの多発、医薬品使用の国際化といった情勢を勘案すると、今後も新たに薬害が発生する危険性は決して小さくない。
そこで、われわれは、昨日改めて文部省と厚生省に対して要望書を提出し、本日の薬害根絶フォーラムを開催するに至った。われわれは、まず、薬害を防止するためには薬害教育が重要であると認識して、文部省と交渉を行った。文部省は薬害と薬物乱用を混同した昨年の表現については反省を表明したものの、今後の学校教育に薬害教育を盛り込むことについては見解を述べず、こちらの要望を伝えるにとどまった。続く厚生省との交渉においては、医師国家試験作成のガイドラインに薬害が明確には位置付けられていない現状が明らかとなった。また、「母子健康手帳」および「予防接種と子どもの健康」の記述見直し、無過失救済制度の拡充などの要望についても今後の課題として残された。
本日の薬害根絶フォーラムでは、サリドマイド事件をはじめとする各薬害の被害実態と被害救済の課題を改めて認識し、昨日の文部省交渉、厚生省交渉を通じて浮き彫りにされた薬害根絶のための課題について話しあった。
われわれは、先の要望事項の実現ひいては薬害根絶と被害者救済の完遂を希求し、今後も、被害者団体相互の連携を拡大・強化するとともに、多数の市民と連帯しつつ諸活動に力を尽くして取り組むことを、ここに表明する。