「政党アンケート結果」に対する薬被連のコメント
<薬被連 代表世話人 花井十伍>
私たち「全国薬害被害者団体連絡協議会(YAKUHIREN)」は、薬害被害者当事者団体によって構成される協議会である。私たちは「薬害根絶」を実現するためには、大きな改革を必要とすることを認識している。しかしながら、特に行政の自己改革は望むべくもなく、政治に対する期待は大きい。
総選挙を前にして、私たちは各政党に「公開質問状」を送付し、薬害問題に対する政党としての認識と取り組みについて回答を求めた。各政党の回答は一覧表のとおりである。
質問1、2については現状認識に関するものであるが、自民党、保守党、自由党の現状追認的回答が際立っている。薬害被害を教訓とした「薬害根絶」システムを構築するためには、すでに小手先の施策が無効であるとの認識を共有するところから始めなければならない。大きな薬害事件の後、各行政担当者の意識が高まるのは、いわば「あたりまえ」であり、改革を先延ばしにしたまま、現在現場が頑張っている事をもって薬害が未然に防げるというのは、あまりに楽観的と言わざるを得ない。
公明党は与党ながら、厚生省の具体的問題点をいくつか指摘していることは評価できる。
その他の野党は、情報公開の必要性等問題意識は共有している。しかし、改革推進の具体性にはいささか欠けている。私たちと共同研究の場を持つなどして、改革プランを提示できる枠組みがつくれれば、与党の一部とともに「患者権利法」「血液新法」「薬事法改正」など議員立法も含めた改革の可能性がでてくる。
質問3に関しては、そもそもCJDが薬害か否かという点で明確に回答が別れた。
自民党、保守党、自由党の回答はCJD薬害の存在そのものを否定するものであり、批判されるべきである。薬害の事実を認識しながら、裁判係争中を理由に、事実そのものを隠ぺいしようとする態度は、到底受け入れられるものではない。
他の政党は、薬害CJDの問題を正面からとらえており、与党である公明党も厚生省の責任へ言及している。今後、全ての薬害CJD被害者救済へ向けて、各政党がいかなる役割を果たすのか注視したい。
質問4は「薬害根絶フォーラム」の中心的テーマでもあった、薬害被害の教訓が教育を通じて伝えられているかという問題に関するものである。自民党の回答では、サリドマイド、スモン、HIVが教科書に記載されているとしているが、認識不足である。私たちは、昨年教科書への掲載状況を調査した上で、文部省担当者と面談した。その場で明らかになったことは、文部省担当者は、薬害と薬物乱用、公害と薬害、薬害教育と薬理教育の区別すらついていない有り様であり、具体的記述が発行者に委ねられているという回答も、教科書検定の実態を認識したうえで言っているとすれば、官僚の詭弁である。
薬害被害に遭わないため、または薬害の加害者にならないために学ぶべきことは残念ながら教育現場で教えられていない。この状況を是正するために文部省の閉鎖的官僚主義自体を俎上に乗せる必要があるかもしれない。文部省担当者と面談するために、議員の口添えを要求したり、文書回答を拒んだり、回数、時間制限を強要する文部省の対応に大きな疑問を感じた。まさに、「教育以前」である。その他各政党も問題点や薬害に関する教育の必要性は認識しており今後、国会等を通しての実現を期待する。
今回、各政党とも選挙直前というタイミングがあったにせよ真摯に回答を寄せてくれたことを感謝したい。市民と政治家との関係が選挙時だけ、ということではなく、常に被害者の声や市民の声に耳を傾けた政治活動を期待する。
<薬被連 事務局長>
薬被連の提唱により、ご多忙にもかかわらず、八政党から回答をいただけたことに敬意を表します。
しかし、現政権政党である、自由民主党・保守党の回答には失望せざるを得ません。薬事そのものに対する認識力の欠如、医薬品の製造・承認から販売の全過程を通じて、国民の生命を守るという一番大切な観点が教育に至るまで欠如していることを改めて恐ろしく思います。
もっと各政党は、人間の尊厳について考えるべきでしょう。
<薬被連 副代表世話人>
そもそも、自由民主党などは、教科書の記載について事実誤認している。8月に発行される薬被連の本(仮題「教科書が教えない薬害」)の中に詳しく紹介される、「薬被連の担当者が手分けして全教科書を調査した結果」や、「昨年の文部省との交渉の結果」が、どれほど寒々しいものであったかを、各政党にまず理解してもらう必要がある。