各政党からの回答一覧(第1回政党アンケート・・・2000年6月)
1.わが国が、欧米諸国に比べて薬害が多発することについて、どのようにお考になりますか。 2.わが国の薬事行政に対して、問題だと指摘できるところはありませんか。 3.CJDが、なお未解決のまま救済されず、死亡あるいは植物人間になっている現状をどう思われますか。 4.教育の重大性が叫ばれている昨今ですが、特に人間の尊厳としての公教育の中で、薬害の歴史・薬害の被害実態を教科書に表記し指導すべきだと思いますが、どう思われますか。
自由民主党  国民の生命、健康に直接関わる医薬品などの安全性の確保は極めて重要な問題であり、このため、医薬安全行政の充実、強化を進めてきたところであります。  特に、近年、サリドマイド、スモン、HIV感染問題などの反省に立ち、厚生省においては各種の施策やシステムの構築が進められてきた承知しています。今後とも、HIV感染問題のような、医薬品などによる健康被害を生じさせる  クロイツフェルト・ヤコブ病は、大変重篤で悲惨な病気であり、有効な治療法もないことから、患者の方々やご家族は大変なご苦労をされていることと思います。
 このため、クロイツフェルト・ヤコブ病については難病に指定し、医療費の自己負担分をなくすとともにホームヘルパーの派遣や在宅療法に必要な日常生活用具の給付など、各般の支援策を実施しているところであり、関係機関がこれらの施策を十分に活用しつつ、患者やご家族の負担が少しでも軽減されるようにすることが大切であると考えています。
 教科書は、教育課程の基準である学習指導要領に基づき、民間の教科書発行者により、著作・編集されるものであり、具体的に何をどのように記述するかは、一義的には執筆者や教科書発行者の判断に委ねられています。
 なお、現在の教科書における薬害の記述については、例えば、中学校の社会科(公民的分野)、高等学校の現代社会、政治・経済や、中学校・高等学校の保健体育などにおいて消費者保護や医薬品の正しい使い方等について指導するとしている学習指導要領の内容を踏まえ、1.サリドマイド事件やスモン事件というのは、有害な薬品によって消費者が被害にあった薬品であること。2.わが国は1960年代に発生したサリドマイド事件やスモンのほか、ごく最近では治療のために使われた血液製剤による薬害エイズの健康被害が起こっていること。3.薬害エイズとは、1980年代前半、アメリカから輸入された非加熱製剤により、2000人に及ぶ人たちがエイズウイルス(HIV)に感染した健康被害であること。等が記述されています。
民主党  製薬企業による利益第一主義や医薬行政の対応の遅れなど、産・官・学・医による癒着構造による「構造的薬害」が主な原因であったと考えます。
 産・官・学・医の利権に基づく関係を清算し、国民の生命と健康を最優先とするよう改善します。情報公開、責任体制の明確化、自己責任原則を徹底させます。
 患者中心の医療になっていないからではないでしょうか。医療政策に患者の意向が十分反映されるような制度改革がなされていなかったためであると考えます。
 医薬品の審査体制を強化し、専門性を高めて安全対策を推進します。
 患者への治療が、治療する側の誤った認識でエイズ同様に蔑視され、感染するのではないかとの不安から診療しなかったり、入院を拒否する病院もあります。このような疾患こそ国立病院で診療すべきだと思います。
 今後の対策としては、移植の際、誰の硬膜を移植しているのかをはっきりさせることであると考えます。
 CJDに限らず、医薬品の被害が一向に減らない。医薬安全局の権限、人員を米国並みにして、このような被害を防ぐことと考えます。
 送っていただいた質問状に、文部省の対応が書かれていますが、「国民のための文部省」になっていないことが明らかですね。
 二度と不幸な薬害事件を起こさないように、ひいては人命の尊厳など生きていく上で大切な価値観を学び話し合うカリキュラムは不可欠だと考えます。
公明党  PL法の施行後副作用情報が急増し、製品の回収報告も増えていますが、製薬企業が世界中の営業網やその他の経路を通じて得た情報を公表するよう義務づけるなどの措置が必要であると考えます。
 しかし、何よりも、安全性への責任感覚を欠く製薬企業の存在を指摘しなければなりません。エイズ薬害の裁判を通じて、新薬の開発や許可に携わる医師と製薬会社との不健全な結びつきが明らかになり、国民の国の薬事行政に対する信頼は失墜しています。全ての薬害被害の背景には、製薬会社の利益市場体質とその製薬会社側にいささか傾斜しすぎた国の医療行政があると言わざるを得ません。その意味でも、製薬会社への厚生官僚の天下りに何らかの規制が必要であると考えます。
 かつてソリブジン薬害や薬害エイズの発生の折りに、厚生省は「現場の混乱」を理由に、販売一時中止措置や回収措置を取ることを強く反対した経緯がありました。国は、危険な医薬品の製造・販売中止や回収など、薬事法の厳格な運用で速やかで強力な対応を行うべきです。また、有効性・安全性に関する臨床情報収集の義務化も必要です。また、国は、医薬品の重複投与や相互作用(飲み会わせ)の発生を未然に防ぐための具体的計画を策定すべきです。  国内では年に約2万件の脳硬膜移植が行われており、硬膜は全てドイツから輸入されました。脳硬膜の移植によってCJD感染の恐れのあることは、すでに87年に厚生省研究者によって学会誌で警告されていましたが、それも虚しく、残念ながら薬害事件が起きてしまいました。薬害エイズ事件と同じように今後、国の責任が厳しく問われるべきであると受け止めています。
 まず何よりも医療行政の中で厚生省の対応について国会において調査を進めるとともに、国は、被害者とそのご家族の皆さんに対する経済的支援を含めた手厚い福祉的対策を速やかに策定し実行すべきであると考えます。
 薬害を未然に防止し、それをわが国の歴史にとどめるために、中・高校や医療専門職を養成する教育・研修期間において、薬害に関する歴史やその実態などについて教えることは極めて重要なことだと思います。薬害の中には裁判を等して事故に至る経緯や責任の所在などが明白にされていることであり、教科書に記述することは何ら差し支えないと考えます。
日本共産党  わが国では、欧米諸国と違い、薬の製造・輸入・販売などの承認審査が製薬大企業言いなりになっており、無用、危険な医薬品・医療用具が事実上、野放しになっています。厚生省は、チェックする役割を果たさないばかりか、薬害を隠し、企業を擁護する姿勢をとってきました。こうした背景に、一部の政党・政治家への企業献金、官庁からの天下りなど、政官財の癒着の構造があります。企業の利益を生命のうえに置く厚生行政が、薬害を多発させる温床になっています。  薬害エイズでは、いまだに多くの資料が隠されたままです。国民のいのちと健康に関わる情報の公開がきわめて不十分で、政策決定も事実上、国民不在で行われている点は問題です。医薬品の安全確保対策についても、臨床試験(知識)、薬の承認審査、市販後対策などどれをとっても、製薬企業に対する規制・監督があまく、審査体制も貧弱で、諸外国に比べても立ち後れが際だっています。  発症者と家族は、死の恐怖と生活問題や看護まで、きわめて厳しい状況におかれており、その苦痛と困難は想像に余りあります。ヒト乾燥硬膜ライオデュラの輸入・販売に関して、安全性確保義務を怠った国に責任があることが明白です。にもかかわらず、「行政に誤りなし」という無責任な態度を取り続けている政府の姿勢は重大です。国は速やかに責任を認めて謝罪し、医療、看護、介護をはじめとする被害の救済対策に万全を期すべきです。  薬害で問われているのは、人の命の重み、人間の尊厳です。薬害の悲劇を二度と繰り返さないためにも、薬害の歴史や被害の実態を教科書に記述し、医師や医療従事者はもとより、広く国民が学べるようにすることは、きわめて意義のあることだと考えます。
社会民主党 政官業の癒着による倫理観・正義感の欠如と隠蔽体質による情報隠し、危機管理能力の欠如、問題が発生してからの対応の遅れなどは構造的なものであり、倫理の確立、情報公開などによってウミを出し切らなければならない。  1.と同様、政官業の癒着、天下り、問題の先送りとその秘密性、密室性、何よりも何度薬害を起こしても反省・教訓化できない体質を改めなければならない。医薬品の承認方法のあり方にもその癒着体質が如実に現れている。石井731部隊に端を発し、現在も続くその体質と人脈を断ち切らなければならない。  まさに「第二の薬害エイズ」であり、絶対に放置してはならない。社民党は中川智子議員を先頭に徹底して政府の追及を行ってきた。真相究明と国による謝罪と補償、再発防止に向けた万全の体制がとられなければならない。また、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法の抜本的改正も必須である。 ご指摘の通り。
保守党  医療上有用性が高く、安全性が確保された医薬品などが、医療現場に迅速に提供されるよう医療安全行政の充実が必要と考えます。特に、近年、サリドマイド、スモン、エイズ感染問題などの反省に立ち、厚生省においては、承認審査体制の抜本的改善、副作用などの安全性情報の収集体制、提供体制の整備、健康危機管理体制の構築だと、様々な取り組みがとられてきたと承知しており、今後とも、エイズ感染問題のような、医薬品などによる健康被害を生じさせることがないよう、医薬品などの有効性、安全性の確保について、一層の努力が必要であります。 (1.と同じ)  クロイツフェルト・ヤコブ病は、大変重篤で悲惨な病気であり、有効な治療法もないことから、患者を抱えるご家族のご苦労は大変なものであります。
 このため、クロイツフェルト・ヤコブ病を難病に指定し、医療費の自己負担分を解消するとともに、ホームヘルパーの派遣や特殊ベッドなどの日常生活用具を給付するなどの支援策を実施しておりますが、これらの施策を最大限に活用して、ご家族の負担が少しでも軽減されるようにしていくことが必要であると考えています。
 なお、ヒト乾燥硬膜の移植とクロイツフェルト・ヤコブ病の関係につきましては、現在、国、製造業者などに対する民事訴訟が提起されているところであり、法的な責任の問題については、お答えを控えさせていただきます。
(回答なし)
自由党  医薬品の安全性を確保するため、適切な検査・試験をすすめ、副作用情報の的確な把握、徹底した検証・調査・情報提供を推進すべき。 (1.と同じ)  難病対策に対する調査研究を進め、同時に適切な医療体制の整備を推進する。  徳育を重視した教育を進め、ボランティア教育などを積極的に導入する。また、現在、市町村が行っている義務教育は国の責任を持って行うこととし、毎週土曜日は家族で道徳や人間の尊厳、集団生活のルールを学ぶ日として位置づけ、地域社会・家族・自然とのふれあいを通じて次の時代を担いうる「よき日本人」を育てる。
自由連合  何事も後ろ回しの官僚の体質が根源となっている。  全ての対応が遅い。薬品の効能について慎重になるのはかまわないが、薬害について既に外国で例が出て使用禁止になっているにもかかわらず、国内で使用禁止にするまでに時間がかかりすぎる。その間に被害者数が増大している。  CJDについては、ドイツの製造元が硬膜採取方法及び管理方法においてずさんすぎたばかりでなく、厚生省は包帯などと同じ規格で輸入を許可した点で問題がある。この点について、厚生省は注意義務違反を問われなければならない。  少なくとも公害などが教科書に掲載されていることとの公平上、集団の薬害についても教科書に表記して教育すべきだと思う。

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