公開質問状(2003年10月28日)

各政党代表者 様
  ご担当者 様

 貴政党におかれましては、日頃、国政の各分野でのご活躍、心から敬意を表します。
 さて、私たち薬害被害者は、危険性が予見可能だった医薬品の副作用や医薬品などに混入した病原体によって人間として当たり前に享受するはずの健康を失い、更に尊い命を奪われました。これら薬害被害による本人と家族の身体的・精神的苦痛や困難、家族との別離の苦痛、死の恐怖は到底筆舌に尽くされるものではありません。このような経験を通じて私たちは、わが国の薬事行政や製薬企業の利益至上主義、あるいは安全軽視のあり方が、薬害を不可避的にもたらす構造として存在することを身をもって知らされました。この構造が温存されるかぎり、国民は新たな薬害の危険から解放されることはありません。現に、サリドマイド・スモン・筋短縮症・薬害エイズなど過去の薬害への反省や教訓があったにもかかわらずクロイツフェルト・ヤコブ病が発生し、陣痛促進剤による被害があとを絶たず、さらにMMR(新3種混合ワクチン)、C型肝炎の問題が係争中という現状があります。
 私たち薬害被害者団体は、「二度とこのような悲劇を繰り返してはならない」と全国薬害被害者団体連絡協議会を結成(1999)し、薬害根絶の運動を展開しております。今日まで5年間、毎年8月24日(1999年の同日、厚生労働省前に「薬害誓いの碑」が建立されました)またはその前後を薬害根絶デーとして、薬害根絶を願い厚生労働・文部科学両省への要望書提出・交渉を継続してきました。
 ところで、本年6月ころから大きな話題になっております、規制緩和にかかわる一般小売店における「くすりの販売」の問題が急展開を見せておりますことはご承知のとおりです。私たちは去る8月、担当大臣および日本薬剤師会等に要望を提出し、「くすり」に関して、他の商品と同列において利便性のみを追及する施策は新たな薬害発生につながる危険性があることを10月の厚労省「医薬品のうち安全上特に問題がないものの選定に関する検討会」や当協議会主催「第5回薬害根絶フォーラム」において訴えました。かつてのサリドマイド、スモンともに市販薬による薬害被害もあり、近年問題化しているスティーブンスン・ジョンソン症候群(SJS)も同様であることはご承知のとおりです。
 薬事行政においてかくも経済性や利便性が追求されようとしていることの危険性をご理解いただくとともに下記質問項目について、貴政党のご見解をお示しいただきたくお願いいたします。
 なお、ご多忙中まことに恐縮ではありますが、ご回答は11月6日までにお願いいたします。ご回答は当協議会のホームページに掲載させて頂き、マスコミにもレクチャーする予定であり、締め切りまでに回答がなければ、恐縮ながら「回答なし」として記載させて頂きます。短期間でのご回答まことに恐縮ですが、投票の際に国民に参考にしてもらいたく、期限を厳守して頂きたくお願い申し上げます。また、電子メールでご回答いただけると幸いです。

質問項目

1. くすりの販売に関する規制緩和について:「規制改革の推進に関する第2次答申」(2002年12月12日、総合規制改革会議が答申)をうけ、政府が医薬部外品指定を拡大してコンビニなど一般小売店でくすりを販売しようと検討をすすめています。また実態として薬剤師不在店舗での販売、大型ドラッグストアでくすりが日用品同様の扱いで販売されていること、深夜・早朝の販売や薬剤師を介さない通信販売・カタログ販売などが横行していながら、厚生労働省は摘発を怠っています。こうした現実について貴政党はいかなる見解をおもちですか。

2. 医療体制やくすりに関する「国民のニーズ」について:近年、小児救急患者に対する受入医療施設の不足から「たらい回し」や患者搬送の遅延によって、患者が重篤な事態に至るなど、救急医療体制全般に係る深刻な問題が全国各地で発生しているなか、コンビニなど一般小売店でのくすりの販売、深夜・早朝の販売などが「国民のニーズ」であるかのようにとらえて前項のような「規制緩和」を政府や業界が進めようとしていることについて、貴政党はいかなる見解をおもちですか。

3. 薬害肝炎問題について:汚染された血液製剤を購入した7004もの医療機関がメーカーにより把握されているにもかかわらず国が公表しないこと、また、国及び日本赤十字社による献血血液の安全性確保体制整備の懈怠に関し、いかなる見解をおもちですか。
 
4. 有効期限の切れたMMR(新3種混合)ワクチン大量使用について:被害者からの指摘をうけ厚生労働省が調査(03.3.11発表)し判明しただけでも、92年10月から93年4月の間、10の都道府県において2000人以上に期限の切れたワクチンを医療機関が堂々と使用し、それを把握できる立場にあった市区町村・都道府県・国が何ら対処しなかったことにいかなる見解をおもちですか。

5. 医薬看護系高等教育について:医療倫理や人権意識を高め、薬害の歴史を忘れないために、大学の医学部・看護学部・薬学部などで、薬害被害者の体験や思いを直接聞くような授業を盛り込む動きが国立大学で始まりつつあるが、このような動きを、国立大学以外でも広げるべく、カリキュラムに盛るこむべきと考えるが、貴政党の見解はいかがか。

6. 義務医教育、高校教育について:小・中・高の公教育において、もっと、過去や現在の薬害についての記述や、患者の権利、医療情報の適切な提供がなされるべく、教科書などに適切な記載がなされるべきだと考えるが、貴政党の見解はいかがか。

7. 薬事及び医療行政について:厚生労働省の薬事及び医療行政に関する検討会や審議会の委員、及び文部科学省の医学教育等に関する検討会や審議会など委員に薬害や医療被害者を受けた当事者を積極的に採用し、「被害から学び、被害を繰り返さない」ための素直な行政にしていく必要があると考えるが、貴政党の見解はいかがか。

8. カルテ開示について:一部公立病院で、請求があれば必ず開示する「例外のないカルテ開示」がはじまり、何の問題も起こらず、市民から高い評価を得ていることが報道されている。一方、国が示すカルテ開示のガイドラインは全て、「開示を拒否できる事項」が記載されている。患者の権利を保障するために、例外のないカルテ開示をすすめる必要があると考えるか、貴政党の見解はいかがか。

9. 医療費明細について:医療単価の明細が、患者にほとんど示されていない。国立大学付属の2病院で、持ち帰る薬の単価が示されているのみである。薬剤の正式名称や単価が示されたレセプト相当の詳しい医療費明細書が自己負担分の支払いの際に明示されるべきだと考えるが、貴政党の見解はいかがか。

10. 陣痛促進剤について:現在、日本では医療機関側の都合のために、陣痛促進剤の使用などによって、火曜日は日曜日の1.5倍、午後2時は深夜の2.5倍の赤ちゃんがむりやり生まされている。このために悲惨な事故も相次いでいる。薬漬け出産から救急医療を充実させていく方向に医療の価値観を改革していく必要があると考えるが貴政党の見解はいかがか。

2003年10月28日

全国薬害被害者団体連絡協議会


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